消えゆく足音の時代に
朝の通勤風景を見ていると、ほとんどの人が車や電車で移動しています。かつては当たり前だった「歩いて行く」という選択肢が、いつの間にか特別なものになってしまいました。確かに便利になりました。しかし、その便利さと引き換えに、私たちは何か大切なものを置き忘れてきたのかもしれません。
若い頃、毎朝4キロの道のりを歩いて通学していました。雨の日も風の日も、その一歩一歩が私の一日の始まりでした。歩きながら考え、歩きながら友と語らい、歩きながら季節を感じる。それは単なる移動ではなく、生きることそのものでした。
人間の記憶は歩いた道と深く結びついています。初めて恋人と歩いた川沿いの道、子供の手を引いて歩いた通学路、一人で歩いた喪失の道。足音に刻まれた人生の軌跡を、今一度たどってみたいと思います。
一歩一歩が奏でる心のリズム
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