「暇」や「退屈」は現代社会では否定的に捉えられがちです。多くの人が、わずかな空き時間もスマートフォンで埋めようとします。通勤電車の中、待ち時間、寝る前のひととき—「何もしていない時間」を恐れるかのように、常に情報や刺激を求める傾向があります。
しかし、人類の歴史を振り返ると、多くの偉大な発見や創造は「何もしていない時間」から生まれてきました。アイザック・ニュートンはリンゴが落ちるのを眺めていたときに万有引力の着想を得たとされますし、アルキメデスは入浴中に浮力の原理を発見しました。これらは、心に余白があったからこそ生まれた洞察です。
現代の研究でも、脳が休息状態にあるときこそ、創造性や問題解決能力が高まることが示されています。常に情報処理に忙しい状態では、脳のデフォルトモードネットワーク(創造性に関わる脳の領域)が十分に活性化せず、新しいアイデアや気づきが生まれにくくなるのです。
デジタルデトックスを実践する人が増えているのも、こうした「余白の価値」への気づきがあるからでしょう。通知をオフにする、特定の時間帯はスマホを見ない、週末は意図的にSNSから離れるなど、心の余白を作る工夫をしている人は少なくありません。
毎日の生活の中に、意識的に「何もしない時間」を取り入れてみるのも一つの方法です。窓の外を眺める、散歩をする、ただ座って呼吸に集中するなど、単純な活動でも心の余白を作ることができます。そうした時間から、思いがけない発見や創造性が芽生えるかもしれません。
情報過多の時代だからこそ、心の余白を大切にする生き方に価値があるのではないでしょうか。