人間の脳は、生存のためにネガティブな情報に敏感に反応するよう進化してきました。この性質は「ネガティブバイアス」と呼ばれ、危険を察知して身を守るために役立つ一方で、現代社会では不必要な不安や悲観を生み出すこともあります。
日常生活を振り返ると、一日の中で起きた小さな失敗や心配事が鮮明に記憶に残り、良い出来事は簡単に忘れられがちです。ニュースメディアもこの人間の特性を反映しており、事件や災害などのネガティブな情報が報道の多くを占めています。
このバイアスを認識することが、心のバランスを取る第一歩です。実際、世界の多くの指標(平均寿命、貧困率、識字率など)は長期的に見れば改善していますが、日々のニュース報道からはそうした全体像が見えにくいのが現実です。
ネガティブバイアスに対処する方法の一つに「良いこと日記」があります。毎日、その日あった良いことを3つ書き留め、なぜそれが起きたのかを考えるという簡単な習慣です。研究によれば、この習慣を続けることで幸福感が高まり、その効果は半年以上持続するとされています。
また、消費するメディアを意識的に選ぶことも有効です。ネガティブな情報ばかりでなく、進歩や改善の物語、解決策に焦点を当てた情報源を取り入れることで、より現実に即した世界観を持つことができます。
ネガティブな情報に目を向けることは時に必要ですが、それが視野全体を占めないよう、意識的にバランスを取ることが心の健康につながります。