私たちの人生には様々な「手段」があります。お金を稼ぐこと、資格を取ること、SNSで発信すること、運動すること—これらはすべて、本来は何らかの「目的」を達成するための道具であるはずです。しかし不思議なことに、気づかないうちに手段そのものが目的となり、本来の目的が忘れ去られていくという現象が起こります。
例えば、多くの人はより良い生活を送るためにお金を稼ぎ始めます。ところが次第に「お金を稼ぐこと」自体が目的となり、そのためにかけがえのない時間や健康、人間関係を犠牲にしていくことがあります。本来、幸せな生活という目的のための手段だったはずのお金が、いつしか私たちを支配する主人になってしまうのです。
SNSも同様です。最初は友人とつながるため、情報を得るため、自己表現のためのツールだったものが、いつの間にか「いいね」の数を集めることそのものが目的となり、実生活での喜びよりも画面上の反応に心を奪われるようになります。
この「手段の目的化」という罠から抜け出すには、定期的に立ち止まって自問自答することが大切です。「私はなぜこれをしているのだろう?」「本当に大切にしたいものは何だろう?」と。
人生の本当の目的は何でしょうか。それは人それぞれに異なりますが、おそらく愛すること、成長すること、貢献すること、美を感じること、真実を探究することなど、本質的な価値に関わるものではないでしょうか。
道具を道具として正しく使うこと。それは私たちが人生の舵を取り戻す第一歩です。手段と目的を取り違えず、本当に価値あるものに時間とエネルギーを注ぐことで、より充実した人生を歩むことができるでしょう。今日、あなたの生活の中で「主人」と「道具」が入れ替わっているものはないか、静かに見つめ直してみませんか。